ツーリアの町に一人の吟遊詩人がやってきた。

その男は背中にしょっていたリュートを持ち一つ軽く爪弾くと

リュートの音にあわせて流暢な口上で話しだした。

 

 

 

その男には夢があった…。

いつか伝説の豆腐をつくるという夢が…。

 

さかのぼること半世紀。

その大陸においてはそれなりの名の知れた剣豪がいた。

その男の名は「ダニエール」

ダニエールはフィルガルト大陸を旅していた。

あまたの魔物を薙ぎ倒し、敵意を持つものをことごとく蹴散らした剣腕は

旅人たちの中に広く知れ渡っていたが、誰も彼の旅の目的は知らない。

なぜなら旅の目的が伝説の豆腐を作ることなのを誰にも話そうとはしなかったからだ。

仮にも一介の剣士、だから豆腐などではなく剣に人生を賭ける事もできた。

しかし彼はそれをしなかった。

そして伝説の豆腐が実在するという歴史書を片手に彼は伝説の豆腐を求めた。

 

だが結局見つけることは出来なかった…。

「剣を持っても豆腐が作れなくては意味が無い…。」

そして彼は決心した。

「伝説の豆腐が存在しないなら自分で作ればいい!」と。

そして彼は今までの商売道具であった剣を手放し、豆腐を鍛える技術を身につけるため鍛冶屋へと職を変えた。

それでも豆腐を鍛えると言うのは並大抵のことではない。

まず彼は一振りの剣を打つことにした。

そして次々といくつもの剣を作り出し、そのときには剣豪ではなく伝説の鍛冶屋として名を知らしめたのであった。

 

彼が欲しいのは名声や富などではない。

唯一の伝説の存在、豆腐であった。

だが鍛冶屋としての人生を送っていても、彼は豆腐にだけは手をつけなかった。

「豆腐に手をつけるのはすべての技術を習得し、伝説の豆腐を作ることが出来るようになったときだけだ。」と自分に言い聞かせ剣を打ち続けた。

 

幾年もの月日が流れ、ダニエールはかなりの剣を作り出した。

そのときにはすでに伝説の剣に負けず劣らずの剣を作り出せただろう。

だが、その腕前も十分に振るうことは無かった。

伝説の豆腐を作るのは夢のまた夢ではないかと思っていた。

彼は伝説の豆腐作りの夢に実質挫折していたのだろう。

鍛冶屋として弟子を取り、剣の打ち方を教え込んでいた。

 

もう一度昔に戻って剣を取って旅に出ようと思ったときも何度かあった。

だがもう無理を出来るような年齢ではなくなっていた。

もうあきらめようと思っていたそんな時、彼女たちは来たのだ。

今では彗星議長と呼ばれている彼女が…。

 

彼女たちはそんなダニエールの夢を実現させてくれたのだ。

豆腐概論という世界に3冊しかない本をすべて揃えてくれたのだ。

そのおかげで彼はついに伝説の豆腐を作り上げた。

出来上がった豆腐は彼の人生が詰まった最高の一品に仕上がった。

食べれば世界一の味、腐らせれば猛毒に匹敵し、凍らせれば伝説の剣に勝るという

世界最高の豆腐はこの瞬間に作られたのだ。

 

その豆腐はダニエールがせめてもの礼に彼女たちに差し上げた。

彼女たちがその豆腐を食べたのかどうかは謎のままである。

 

結局、彼は伝説の豆腐に生涯をささげたと言っても過言ではないだろう。

 

 

 

吟遊詩人の歌が終わる頃にはすでにたくさんの人達が集まっていた。

歴史に名を残した人の話は大概のものが英雄伝だ。

なのに豆腐に人生を捧げるなどという話は斬新なものだったのだろう。

そこに居た人達は拍手し、吟遊詩人におひねりを渡していた。

その時!

「ダニエール師匠、なんでわざわざツーリアまできたんですか?」

「馬鹿者!何度言えば分かるんじゃ。

 伝説の豆腐は並みの包丁では切れん。だから有名な包丁「包丁-49」が

 どうしても必要なんじゃ!!!よく覚えておけフランチョワ!」

「そんなもんですかね…、ん?なんですかあなたたちは!」

そして彼らは日帰りでは帰れなかった。

 

---あとがき---

大方の人達の予想を覆し、4作目はあの伝説の男ダニエールです。

少なくともCresteajuで彼が影の功労者であることは間違いないだろう。

彼が昔伝説の剣豪であったのはありえそうだとおもいませんか?

なにせ伝説の鍛冶屋なんだから剣が使えてもおかしくはないはずです。

というか脇役でこんなに引っ張っていいのだろうか…。

裏設定としては手放した剣がエストランテで埋めたことによって錆びたという推測は立ちます。というかエストランテ打ち直すぐらいの技量を持ってたらわざわざ「包丁-49」なんか探さなくてもいいでしょう。そしてこのときエドは彼に入れ歯を打ってもらうのでした(笑)。