僕は三ヶ月も旅をしている。
今はちょうどユールクレイラのあたりでしょうか…。
ユールクレイラと言えば温泉かもしれませんけど僕はそんなに悠長なことはしてられません。
実は最近フィルガルトを専門に調べる学者の間で大きな進歩があったのです。
それは私たちと先生の戦いの時にイリーディアの場所を見つけたことで空白のフィルガルト時代の資料が発見されたことにより他の大陸の存在が明らかになったこと。
他の大陸は海の向こう…、そうなるとイリーディア以外の土地で資料を見つけることが困難になります。だから僕はもっと重要な資料を求めてこのように大陸から離れた場所に他の大陸の資料が見つかればと調べにきました。ジーダイのほうが確証はあったかもしれないですけどジーダイには他の学者がたくさん訪れているので、新しい資料は望めないと思いました。ということで今このユールクレイラにいるのです。
ですが本当にこんなところに重大なものがあるのでしょうか…。今思えばこの選択は誤りだったかもしれません。学者のほとんどは手がかりがないところから始めなければならないと思いますが、さすがにフィルガルト時代との関係など記されていません。とにかくこの島の史跡を巡ってみるほかはないようです。
とりあえず情報と言えば山のほうにでも行ってみましょう。
山の中はちゃんと道があるのですがそれほど人の手は加わってません。いろんなところから温泉の湯気が立ちのぼっています。僕がもう少し山の奥のほうへ進んでみるとあまり人が寄りつかなさそうな滝を見つけました。その滝の横には洞窟がありちょうど人一人が中に入れそうなぐらいの入り口だったので中に入ってみました。
いったい何ヶ月ぶりの遺跡探索でしょうか…。最近は学者たちが調べ尽くした場所にしか行ってませんでしたので久々に学者の探究心が騒ぎます。
岩肌などの様子から見てしばらくの間は人が入っていない洞窟のようです。
となると…、結構年のたった洞窟なのでしょう。うまくいけばフィルガルト時代のものも見つかるのではないか、とおもいます。
普通洞窟というものは寒い傾向があるのですが、ここの洞窟は近くを通る温泉脈のせいで少々蒸すぐらいです。まあ普通に考えたら火山島じゃないかぎり温泉なんて湧き出ないものらしいのですが…。となるとルナンさんがクレスフィールドの地面を掘って温泉が出てこないのかなぁと言っていたのは実現できないと言うことでしょうか。
まあ今はそういうことを考えているわけにもいかないみたいです。
けっこう古い場所ならば魔物がたくさんてくるでしょう。気をつけなくては…。
けどいくらユールクレイラでも、こうも蒸すとヒヤウニが出る可能性はないでしょう。
あ、ヤマウニ…。そういう手できましたか…。
ヤマウニといえば焼酎に入れると絶品なんですよ、知ってましたか?って逃げられた〜!
せっかく焼酎にしてもらおうと酒場に持っていこうと思ったんですけど…。
まあ僕の目的はヤマウニじゃありませんし、進みましょう。
何分歩いたでしょうか…、けっこう深いところまで来たと思うんですがまだ行き止まりには着きません。これぐらいの時間があったら島を一周できると思うんですが…。
やっぱりユミさんの予想は当たりですね。ここになにかフィルガルトに関係するものがあるのでしょう。その証拠にここらへんの壁にはフィルガルト時代特有の石で作られてます。
やっぱりイリーディアの裏口みたいなものになってるのでしょうか。
さらに歩いて僕は広いところに出ました。途中いくつか分岐がありましたけどここがこの洞窟の中心部でしょう。奥に扉らしきものが見えます。
というかその前に誰か居る…?魔物に行く手を阻まれています。助けないと…!
「どいて下さい、先生直伝スーパーセル!!!」
魔力によって生成された風はその場にいるすべての敵を飲み込んで切り刻んだ。
通常よりも多くの魔力を注ぎ込むことにより数段上の威力を発揮した。
「ふぅ、これでいなくなったようですね、大丈夫で…、ってシンディさん!」
その場には過去に共に旅をしたことがある旅仲間がいた。口数が少ない清楚な雰囲気を出しているその女性はサヴィアーの側に近寄ってきた。
「やっと見つけたわ、サヴィアー。」
いきなり話し掛けられ戸惑う。
「あ、あの…なぜシンディさんがここに?」
不意に頭の中で気になっていたことが口に出た。
「え、それは…、ユミにあなたがここにいるって聞いたから…。」
それだけではサヴィアーの頭の中の謎は解けない。
「私には今は他に行く場所がなかったからここに来たの。」
なるほど、彼女はたった一人の肉親である父親を失って今は孤独の身。行く当てがないという理由はもっともなことだ。
「でもどうして僕のところへ?ほかにもルナンさんやユミさんやナックさんのところがあるんじゃないですか?」
そういってみたがシンディは特に答えようとはしない。
思い切って彼はこう言った。
「………じゃあ僕でよければ一緒に行きましょう、まだ調べなければならないこともありますし。一つのところに留まることはほとんどないですけどそれでよければ…。」
言って彼は顔を赤らめたが…、
「分かったわ。」
シンディは否定することなく笑顔でそう答えた。
「じゃあ調べることを調べてさっさとここを出ましょう。」
二人は共に奥の部屋へ入っていった。
ここからこの二人の失われた歴史の研究の旅は始まった。
<サヴィアーの日誌より抜粋>
その後…
「ふ〜ん、サヴィアーって今シンディと一緒に旅してるんだ〜。」
ナックはさも意外そうな口調でそう言った。
「わしも負けずにもうそろそろ嫁をもらわんとな。」
「あっ、あのまだけっ、結婚までとか、そんなはなっ、話はしてませんよ!」
そんなサヴィアーを見てライゼルは笑っている。
「おっさんの嫁になる人はさぞかし大変だろうな。ネタ作りでも大丈夫なすごい人じゃなければ無理だろ。」
「ディザよ、そんな事を言ってて大丈夫なのか?」
「そうよね〜、せいぜい尻にしかれないように頑張りなさいよ。」
「なんだと!」
「あの〜家具破壊だけは止めてくださいよ。」
サヴィアーは恐る恐る注意する。
「シンディもこんなのと一緒で大丈夫なの?気が利かなそうだけど。」
「私は別に…。」
「ふ〜ん、ならいいんだけどね。」
そんな会話をを思いつくままに話していたらそのときを狙ったかのようにルナンが部屋に入ってきた。
「みんな久しぶりに集まったんだからご飯食べていってね。」
(一同)「……………。」
「もしかしてルナンの料理ってすべてトマト入り?」
ユミは大方の予想はついていたが念のためディザに聞いてみた。
「ああ、いいかげん飽きてきたりする…。」
「黙って食べなさい!エクスティンクション!」
「うわ〜〜〜〜!!!」
クレスフィールドの夜はふける………。
---あとがき---
サヴィアー視点の冒険記を書いてみたかったために書いた話。
クレイシヴ直伝スーパーセルってたぶんかなり強いんでしょう。いつ覚えたのか…。
恋愛要素でサヴィアー×シンディと少しルナン×ディザを加えました。
サヴィアーとシンディの関係って何か起きない限りあまり進展はしなさそうです。
こういうことが起きたらサヴィアーはあまりのうれしさに踊りだすかも…。
というかルナンの料理がトマトばっかりだと困りますね。ディザもルナン相手じゃ勝ち目ないです。なんかやらかすと決まってエクスティンクションってのも危ない。ディザ以外の人間じゃひとたまりもないでしょう。