この「時流」は、フリーの作品ながらプレイ時間6〜8時間という長さのシナリオを持っています。
特筆すべきは、フリー作品では珍しいボーカル付きの挿入歌が豪勢に入っていることと、シェアウェア作品に
なんら見劣りしないような美しいグラフィックかと思われます。
<グラフィック>
まず、一つ目に、立ち絵に手間をかけているなと思いました。通常、仕事量が増やせない場合は、
キャラのグラフィックだけ描いて、表情を追加、といった感じになるのでしょうが、この作品の場合、
それぞれの立ち絵ごとにキャラクターを描きなおしているみたいですね。
これによって、体全体で表情・感情を表現することができ、非常に親近感が得られます。
また一枚絵の部分も、非常によく出来ており、背景描写まで手を抜いていないのがわかります。
一番のポイントとしてはこのゲーム自体の画面サイズ800×600のサイズでの画像の描画は一苦労ではあったのではないかと、
思うので、それだけの時間と手間が掛かっているのではないでしょうか。
<BGM>
情景に似合った曲がシナリオを助長させて感動的なシナリオを表現しています。
大概、一様な曲を使用している作品は多いのですが、このゲームは、荘厳な曲から
ギターを使用したヘビーな曲まで、情景に合わせてうまく使い分けられている点はよい点です。
また、前述したとおり挿入曲がボーカル曲というのは高評価を付けられますね。
グループの規模にもよりますが、個人サークルでこれだけの労力はなかなかできることではないので。
作品に対する熱意などが伝わってきます。
<シナリオ>
非常に深く作りこまれた作品です。
時の表現に物理科学といった観点からの表現をしたり、各家の役割・確執など多くの設定の裏と
それに沿ったシナリオ表現は流石というべきでしょう。
ただ、一つ残念だったのが、「時系列の移動」を多用しすぎている節が見られたことです。
シナリオ構築上、時系列の移動はあまりに多用しすぎると、ユーザーが状況を認識するのに
大変時間がかかったり、せっかく理解してきたシナリオの流れを壊す要因になりかねないのです。
とはいえ、この作品のテーマは「時間」ですから使わないわけにもいかず、またしっかりと作りこまれているために
ミスがあった様子は見られなかったので、大幅な失敗とはなりえませんでしたね。
しかし、日常描写、問題解明のシーンにおいてシナリオは非常に綺麗なものとなっていたので、
それだけで、十分な満足度が得られるシナリオ構成となっていました。
長い長い時の流れと、無限に繰り返していく世界。
この連鎖を主人公は断ち切ることができるのか。
また二人の時間に囚われたヒロインを助けることが出来るのか。
この物語の先にある真実は…。
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