BLUE

 

 

 

 

それは遠い昔のこと

儚く悲しい物語…。

 

     無限にも続く海、そこに少年はいた。

     いや、海という表現は正しくないかもしれない。

     一面が青い世界で、自分は浮かぶようにそこにいたからだ。

 

     なぜ、そこにいるのか、まったく分からない。

     ただ、そこに漂いつづけるだけ、

     終わりのないその場所で。

 

 

その日は紅い夕焼けだった。

沈んでいく日を背に歩いていく一つの影。

 

「ふう…」

俺はふと空を見上げる。

日が沈む向こう側になにがあるのだろうか。

それは俺が簡単に想像できるようなものではない。

 

だが、その先にある「何か」に俺は惹かれているような感覚を覚える。

特に最近はいっそうその「何か」に惹かれていることが多い。

今の俺はそれを確かめたいのだろうか…。

 

しばらくそんな事を考えながら歩いていたのだが、そのとき一人の少女の姿が見えた。

よく知ってる顔だ。

その少女、真澄はその堤防の上で髪をなびかせ立っている。

「よお、どうした?」

と、俺は声をかけた。

真澄は振り返り、俺の顔を見ると小走りに駆け寄ってきた。

「あ、潤也。別になんでもないけど、潤也はなにしてるの?」

「ん…、ただの散歩だ。」

なぜ、この時間にこんなところにいるのか、気になったが口には出さない。

「散歩か、私も一緒に行ってもいいかな?」

無邪気にそういって俺の顔を覗いてくる。

「好きにしろよ」

ぶっきらぼうに俺は答えた。

「やった、えへへ。海岸に行こうよ」

何を言っているのか、ここでも十分海がよく見える、というかほとんど海だ。

「今、海を見てたばっかりじゃないのか?」

と、とりあえず聞いてみた。

「海はいくら見てても飽きないと思うけどなぁ…、ダメかなぁ?」

一瞬残念そうな顔を見せる真澄。

「いや、別にいいが…」

「やった!じゃ行こ!」

彼女は一転して笑顔に変わる。

そうして二人で海岸に向かって歩いていく。

他愛ない日常のやり取りをしながら…。

 

 

     少年はあたりを見回してみる。

     永遠に続くかと思われる広大な海の上で何かを探す。

     そして遠くのほうに見つけた。

     少年は手足を動かしてその場所へ向かっていった。

     その場所まではとても遠く、長い時間だったが

     少年にとっては苦痛ではなかった。

     いつの間にか一人でいた寂しい広大な海で見つけた

     自分以外のものであったから・・・。

 

 

その日も俺は物思いにふけっていた。

授業に集中せず、窓の外を眺めている。

その景色は少し曇っているのでいい天気とはいえないが正面には青い海が映っていた。

その景色を見ていると、いろいろな考えが頭の中に浮かぶ。

 

普通の生徒ならば放課後に何をするか、とかそういうことが浮かぶのだろうが、

俺の頭の中にはよく分からない自分の心のことがあった。

心の中に靄があって、それは不安定な心を不安にさせる。

心の奥底で悩み、迷うもう一人の自分がいるように思える。

そういった感じで精神の壁と思える難関と立ち向かっている。

 

そんな想像。

実際に起きていることでありながら空虚な感覚に囚われる。

そういえば最近は一人で考えている時間が長くなった気がする。

 

「おい、どうした?」

不意に現実に呼び戻すかのような呼び声。

「…ん?なんだ北岡か、どうした?」

とりあえず返事をしておく。

「どうしたじゃないよ、声かけてもボーっとしててよ。」

「ちょっと、お前のいる現実世界からトリップしようとな」

適当に理由をつけてみた。

「いや、訳わかんないから…」

…わかれよ。

時計を見るともうすでに放課後のようだ。

気づかないうちに6時間目の教師は消えていた。

「で、何のようだ、1秒で手短に10字以内で話せ。」

いまだボーっとする頭でそう言う。

「ただ話すだけで条件多いぞ!?」

抗議の質問だろうか?

「いや、そんなことはおれの知ったことじゃない。」

「無責任ッスね!!」

よく連続で突っ込めるよな…、一種の才能だろ…。と心の中で思う。

「んじゃ、あとよろしく」

そういって鞄を持ち背中を向ける。

「何をよろしくしたんだよ。っていうか俺の用件は無視かよ!!?」

後ろから声が聞こえたが無視しておく。

相変わらず騒がしい奴だな…。

 

日常生活はこんな感じで特に何事もなく過ぎるが、つまらなく暮らしているわけでもない。

家も至って普通の家族だし、友達が一人もいないということもない。

結局のところ、平凡中の平凡な生活をしているわけだ。

 

だが最近、俺はそんな平凡な生活が退屈になってきた。

刺激のある生活を少しでも送ってみたいと思っている。

その影響か最近はよく海を見てボーっとしている事が多くなった。

一度旅に出てみたい。そう頭の中で考えたことがある。

だが結局のところ実行することは出来ない。

今という生活に縛られているからだ。

そして、そう考えているうちにも平凡な毎日が過ぎていき、

俺はそんな生活に対してどんどん憂鬱になってくる。

いつかそんな生活から抜けられれば、とよく思う。

 

 

     少年の向かう先、そこには一人の少女がいた。

     そして少女に触れたとき、2人のいたその場所は小さな砂の浅瀬へと変わった。

     少年はこの世で自分とこの少女しかいないのかと思った。

     とても寂しく、悲しかった。

     しかしその少女は言った。

     「ここが物語の始まりと終わり」と…。

 

 

放課後、海沿いをとおって商店で寄り道して、出てきたところで偶然真澄と出会う。

案の定、真澄は俺の隣を歩き出し、堤防の上まで来た。

その上で俺が腰をおろすと、その隣に座る。

 

海は無限に広がっているかのように思う。

人はそこに安らぎを覚え、波の音を聞き、心を休ませる。

俺もまた、その海を見ていた。その隣には昔なじみの少女。

長い時間だったかそれとも数分のことだったか、一瞬時を忘れてしまっていた。

「あの海の向こうには何があるのかなぁ…?」不意に真澄の声。

「さあ…、分からないな」

思ったとおりの答えだったのだろう、表情は変わらない。

「そこには何があるんだろうね」誰に訊いたのでもない、もちろん俺にも。

「きっといつか分かると思う」

根拠はないが俺にはそう思えた。

立ち上がって真澄は俺の手を取る。

「行こうよ。」

すべての答えが見つかるのはいつになるかは分からない。

けど、いつか、きっと・・・

 

 

−−−あとがき−−−

 

以前書いた作品。時間を余りかけずに書いてしまったものだから、出来のほどはそれほどでもないと思う。

抽象的な表現の上に何が言いたいかよくわからないかもしれません。

将来的には、長く、書き換えるかもしれません…。